ムカつく。
その頼りきった目も、大切に見守る目も、

どっちも嫌いだ。

このもどかしく思う気持ちさえも



「三橋、次の時間数学だぞ。宿題はやったのか?」
「やっ…やってない」
「まったく…ほら、ノート見せてやるよ」
「あ あり、がと 泉君は優しい、ね」

最近思うんだ、泉はやたらと三橋を気に掛けるって。三橋も泉が居ないと落ち着かないって言うか、困ったときは必ず泉が助けてくれるのを判ってるみたいで。
それって凄く面白くないし、俺のココロは嫌だって言ってる。だって、コイビトの俺じゃなくてトモダチの泉を頼ってるんだ。ほんと、何でだろう。

「三橋」
「うおっ…田島君…」
「それ写し終わったら俺に付き合ってよ」
「う、うん。待ってて、ね」

苛々してるのか何なのか判らないけど、とにかく三橋と二人っきりになりたくて俺は急かす様に声を掛けた。三橋も多分慌てて写してるのか、いつも以上に雑な文字が真っ白なノートを黒くしていた。
それでも全然動きの遅い三橋は一向にシャーペンを置く気配が無くて、休憩時間だってそろそろ終る。

「まだ?」
「ごめっ……」
「早くー」
「うう……」

待たされるのは苦手、のんびりってのも俺の性格的に駄目。でも、俺は三橋が好きだから結局は待つんだけどね。

「三橋が困ってるだろ?」
「何だよ泉」
「急かすなっての」

待つって思ったときに、またムカつく奴が俺達の間に割り込んでくる。そんで、三橋の目が縋る様に泉に向いた。

「お、俺…写すのが遅くて…」
「そんなの気にするな」

何なんだよ。何なんだよ何なんだよ何なんだよ!!俺が悪いのか?ちょっと言っただけでその後待ってたじゃん!
最近、こんなやり取りが多くなったと思う。三橋と付き合うってなってから少しづつ泉が目障りになってきた。三橋も元からのに拍車が掛かって訳分かんねー。

そうこうしてる間にチャイムが鳴って授業が始まった。三橋は後僅かを残して写しきれなかったモノを自分でやると泉にノートを返した。
俺の席の隣は三橋で、先生の長話の最中もずっと机に噛付いていた。俺との約束、守れなかったのを悪いと思わないのかな。そもそも、今の三橋の中に俺の存在はあるのか。

頭の中を巡る最近の俺達のやり取り。
必ず現れる泉に三橋を取られてばかりで、三橋も別段気にせず泉に心を許してる。もしかして、俺って蚊帳の外ってやつ?

三橋の好きが泉に移っちゃったのだろうか。

「それっておかしいよな……」

頭の中で考えていた筈が、つい声に出して言ってしまったらしい。

「……田島、くん?」

隣の三橋が不思議そうに俺を覗き込んできた。

「三橋、それっておかしいよ。俺、お前の嫌がる事何もしてないだろ?」
「え…ちょ、田島君……」

止まらなかった。俺は授業中ってのも忘れて三橋に問いかけて、当然、困った顔の三橋はオロオロと視線を定めない。近辺のクラスメートも不審に俺達を見てきた。そして、泉も。

「先生ぇー」
「何だ田島」
「体調が悪いみたいなんで保健室行っても良いですか?」
「お前が?……まぁ、いいだろう。一人で行けるか?」
「三橋君に連れてって貰います」

俺は半ば強制的に三橋の腕を掴み教室を出て行った。どっちが病人なのか判らない状態に、クラスは俄かに笑いが起きていた。





「田島君っ!」

ズンズンと廊下を歩いていたら、珍しく三橋が大きな声を出してきた。掴まれた腕を振り払おうとしてるのか、籠められた力が俺の脚を止めた。

「体調が悪いって……だいじょう、ぶ?」
「嘘だよ」
「え?」
「仮病。俺は全然元気だよ」

飄々と笑顔を見せれば、三橋は驚いたのか大きな瞳をクリクリさせて。

「よかった」

小さな吐息と共に出た言葉に、一応心配してくれてたんだと素直に嬉しかった。

「でも……ど、して…」
「ん?」
「どうして…う、嘘なん、か」

当然な質問だと思う。田島はそれを聞いてニヤリと口を歪め、その後、両端が裂ける位に笑顔を見せた。

「聞きたい?」
「うえ…あ、」
「聞きたいだろ?」

ちょっとだけ命令口調に言ってやれば、三橋はあっさりと首を上下に揺さ振って。
俺は三橋の腕を再度掴み、そのまま誰も居なさそうな教室を探した。引き摺られる三橋の腕が小刻みに震えだしたなんて、気付かないふりをして。





「座って」

実験道具が乱雑に置いてある、今は滅多に使われる事の無い科学準備室。ここに三橋を連れ込んだ俺は、テーブルにその体を投げ置いたところ。
軽く言葉を掛ければ素直に従う三橋。でもその顔は不審と恐怖が入り混じっていて。

「す、座って……どうする、の?」
「エッチするんだよ」
「えっ…ち…?」
「そう。ここで、三橋を犯すの」
「なん、で……」

弱々しく聞かれて、俺の顔は犯罪者みたいに怖い顔になったと思う。そんで、何でか知らないけどすっごい楽しい気分。

「どうせ嫌われるなら、やりたい事やろうかなって」

罪悪感も背徳感も何も無かった。本当にどうでもいいって、その時は思ってたんだ。

「三橋、脱いで」
「い…嫌、だ」
「脱げって」
「脱げ、ない…」
「なら俺が脱がしてやるよ」

カチャリとベルトの金具が鳴った。三橋は恐怖で動けないのか、その仕草を震えながら見ていた。
抵抗しないのは三橋の良いトコか悪いトコか。暴れられても困るけど、どうせ犯すなら無理矢理ってのも試してみたかったかも。

「あれ?三橋……立ってないよ?」
「ううっ……」
「やっぱり俺じゃ駄目なの?エッチしたくない?」
「違っ……怖い、よ…田島く、ん」

田島の手に握り込まれている物は、三橋の何も反応してない柔らかなそれ。熱なんて篭る気配も無く、そのまま握りつぶせる位に無気力だった。
扱こうにも本体の気が此方に向かないと無意味だからと、俺は鎖骨を覗かせるワイシャツを上から一気に引き裂いた。ビリビリと布の裂ける音がしたと思えば、三橋の小さな悲鳴も同時に聞こえてきた。ちょっとだけ無理矢理感が出てきて、俺は変に興奮を覚え。

「いやっ、あっ……ひぅ…」

胸の両端に可愛く並ぶ桃色の突起に舌を這わせ吸い付いて、時折甘噛みをすれば三橋の声は完全に俺の求めた事情の声。鼻に掛かった甘ったるいそれは俺の雄を元気にするのに十分な威力を持っている。

「立ってきた」
「や…だ、ぁ……ぅぅ…」
「嫌でも気持ち良いんでしょ?」
「気持ち…よく、ないっ…」
「強がり」

立ち始めたらこっちのペース。チロチロと器用に指先で先端を弄ってやれば、トロリ先走りが次のステップへと誘ってくれる。美味しそうなそれに、双起を舐めていた俺の口は迷う事無く下へと降りて、パクリいやらしい音を立てながら吸い付いた。

「あぁっ……んっ、あぁっ」

扱いていた時よりも三橋のそれは大きくなって、甘い蜜はコクリコクリと飲める位に溢れ出していた。わざとらしく音を立てて飲んで、ふと、視線を逸らせば面白いものが目に飛び込んできた。

「んやっ……田島、くん…なに?」
「へへ。良いもん見つけた」

ぐっと背を伸ばして田島が手にしたものは、透明なガラスの試験管。それを蜜の溢れる三橋の雄にグイグイと押し当て、濡れた試験管を下穴に宛がった。ヒンヤリとした冷たさに肩を縮める三橋に、田島はニッコリと微笑を見せた。と思えば……

「ひっ…?!」

グプリと空気の漏れる音と共に、試験管は三橋の中へと進入してきた。

「力入れたら割れちゃうかんね」
「あ、あ、あっ……ひくぅっ……」
「どんどん入ってく……三橋ってやらしーのな」
「いやあっ……田島君っ、抜いてっ……!」

嫌がる声を無視して、試験管は何度も何度も三橋の中を往復する。その最中にも俺の空いてる手は扱きを止める事は無く、刺激に反応する下穴はキュウキュウとガラスを締め付けていた。

「まだまだ。もっと壊れてよ、俺だけのためにさ」
「いやっ…やだっ……たすけ、てっ」

ん?助けて?タスケテ?……誰に言ってんの?俺?それとも、

「泉が助けてくれると思ってんの?」
「な、に……」
「泉が三橋を救ってくれるって、そう思ってんの?」
「たじ………」

腹の底からどす黒いのが湧いてくる感じがした。苛々して、でも悲しい感じが俺の頭を埋め尽くし始める。
ガシャン!直後に聞こえた何かが割れる音。小さな悲鳴と共に、パラパラとそれが床へと落ちていった。

「田島君っ!手ッッ!!」

ボタボタと落ちる血液、元を辿ったら西浦野球部を引っ張る大切な手から流れていた物だった。
下腹部の異物感が無くなったって事は、割れたのはあの試験管。三橋は慌てて手を差し伸べたが、あっさりと払われ机に縫い止められてしまった。

「俺の何が嫌なんだよ…」

下を向く田島がボソリと何かを言ったような……。うまく聞き取れなくて、答えれなかった。

「裏切り者」
「えっ…――!!ひっ、んあっ…ああぁっ……!」

合図も無しに盛りを突き刺され、たいして慣らされてもいないそこはギチギチとその進入を拒む。それでも力任せに突き進み、程なくしてその全てが三橋の中に納まった。
手から零れる血液は止まらなくて、三橋の細い腰を真紅に染めてゆく。それが綺麗だと、胸元、首筋、頬に手を添えて、完全に俺色に染まったコイビトは喜んでいると錯覚してしましそうになる。

大好き。

本当に好きなんだ。泣かせて喜びたくもないし、これ以上嫌われたくも無い。だけど体が勝手に動くんだ。泣かせたい、嫌われたっていいって。
ココロと体がバラバラで、自分は一体何をしたいのか判らない。確実にいえる事は、今の三橋は後者の俺が求めたそれになっているって事。もう駄目だ。三橋の目には俺は最低な男に映っているに違いない。

戻れない過ちに、逃げ出してしまえばどれだけ楽かと考える。だけど、もう三橋の横に居れなくなると考えると視界が真っ暗になって、動けない。

「あぁっ、んっ……ああぁっ」
「もっと…もっと声聞かせて」
「ひ、んっ……うぅっ……やだっ…」
「啼いて、鳴いて、泣いて。俺だけの為にないてよ」
「はっ…あ、…くるし、いっ」

皮膚のぶつかり合う音が一層大きくなって、動かす腰も速さを増した。互いに限界が近いのか、呼吸のペースも短くなる。

「ああぁっ…いっ、く……」
「俺も…出るっ」

一際甲高い声を出し三橋は果て、田島も少しずれて三橋の中に熱を放つ。残る虚無感に言葉も無く、田島は静かに中から自身を抜き出した。





呼吸も間々ならないまま、三橋は自分の全身に着く血液を落としていた。破れたシャツが罪悪感を湧き上がらせる。

「……ごめん」
「……」

返事は無い。当然だ、あれだけの事をして今更普通になんて出来るわけがない。判ってやった事、嫌われていいって自分に言い聞かせたじゃないか。

「田島君…はい」
「え…?」

下を向く俺に、三橋が真っ白なタオルを差し出してきた。受け取れば、それは水に濡れていて、血を流す俺の手から熱を奪ってくれる。

「……保健室行こう?」
「三橋…怒ってないの?」
「辛かった…けど、怒ってない、よ」
「なんで…」

諦めきれない俺の心がフワリと軽くなった気がした。三橋が俺に話し掛けてきてくれる、それだけで純粋に嬉しかった。

「俺、は…田島君が好き、だ」
「俺だって三橋が好き」
「なら、十分…です」
「何が?」
「田島君が…俺、を好きで居てくれるなら…俺は何をされても、いい…から」

ビックリ……三橋の口からそんな言葉が出ると思わなかった。何されても良いだなんて、俺は気に食わないからって三橋に酷い事して、泣かせて、挙句縋って、なんて格好悪いんだろう。

「泉と仲良くしてるのが嫌だったんだ」
「泉君、は、大切な友達だから…」

友達って便利な台詞。誰にだって当てはまるそんな言葉が聞きたいんじゃない。

「友達って…三橋にとってはそれ以上のもんなんだろ?」
「今までと…変わらない、よ」
「変わってる。三橋は泉が好きなんだ」
「どうし、て?田島君は…俺が、嫌いに、なったの?だから……」
「違う!俺、除け者にされたと思って。三橋の気持ちが泉に移ってったと思ったんだ」

話の論点が全く掴めない。俺は何が言いたいのか、伝えたい言葉は嫉妬という暗いカーテンに遮られ、纏まらない。だけど、如何しても確認したい事がある。

「俺は?」
「え?」
「俺は三橋にとって何?」
「…大、切な…恋人」
「恋人?今も?」
「違う、の?」

俺は暫くの間全身に力が入らなかった。このもどかしく思う気持ちさえも、三橋はあっさりと吹き飛ばしてくれたんだ。何も無かった様に、俺の醜い部分も含めて好きと言ってくれた。
今更戻れない過ちで、守ってやらないといけない恋人を傷つけ泣かせたけど、これで終わりじゃない、これからがある。

今から先、また苛々する事もあると思う。そんな時は、素直に気持ちをぶつけよう。そして、三橋の大きな愛に包んでもらおう。
そう考えたら、多少はココロが軽くなった気がした。

「違わない!これからもずっと俺たちはコイビトだぞ!」
「うん」
「ッ…!イテテッ、また血が出てきた。保健室行こうぜ!!」
「うんっ!」





END

終りよければ全て良し!ってね(おい)
杏子様、大変お待たせしてすいませんでしたorz



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