ずっと一人だった。
外面的じゃなくて、内面で。

誰も本当の俺を知ろうとしない。
知られない様にって必死な俺。

毎夜苦しくて、毎朝辛くて、泣きたいけど泣けなくて。
もうはち切れそうって、そんな時に出会ったんだ。


俺と同じ孤独を知る、お前と。

おもてうら



「田島っていつも笑ってるよな」

春も過ぎて梅雨に入るこの時期、季節の変わり目にはよくある不安定な天候。
昨日晴れたと思えば次は大雨。今日がそれ。昨日の快晴が嘘の様にどしゃぶり。
気分が滅入る雨音に、ミーティング最中のメンバーの集中力も散漫になってきていた。

「そう?」

次の試合相手の資料に目を通しながら、田島は欠伸を何度も繰り返す水谷に返事を返す。

「毎日楽しそうで羨ましいな」
「そんな事ないよ」

俺、暗いから。
家では殆ど喋らないから。

言おうと思って止めた。
どうせ信じてもらえないだろうから。
そう思わせない様にしてきたし。

「ポジティブ精神は見習いたいよ。な、三橋!」

突然、水谷は自分の後ろで阿部に説教されていた三橋の肩に腕を回す。
グイッと引っ張られる形で水谷の胸に体重を預けた三橋は驚きに目をパチパチさせて、う、あ……え?などと珍妙な声をあげていた。

蹴り倒したい衝動がジワリ。
俺の三橋に気安く触るなよ。その腕を二度と使えない様にしてやろうか。

腹の中ではそう思っても外に出せない。
だから、取り敢えずの攻撃。気休めの腹癒せ。

「俺もやる!三橋ー!」

ビヨーンと脚力をフルに使い飛び付く。
丁度、二人の間に割り入って水谷を突き飛ばした。

「いってー、何すんだよもー」
「ポジティブポジティブ!」
「ハァー、やっぱ羨ましいよ」

肩辺りを摩りながら、水谷は参りましたと両手を上げる。
その間も俺は三橋にしがみ付いて離れなかった。いや、離れられなかったが正しいと思う。





苦しい、苦しい。
笑いたくないよ。三橋と二人っきりになりたい。誰も要らない、側に寄らないで。





「……田島、くん」

俺の耳元で三橋が名を呼んだ。
その後に続く言葉なんて無い。無くて良いんだ、それで十分。

安心する。
俺を判ってくれる唯一の存在。孤独を知る俺達だから判れるし、穴を埋められるのだと。















ミーティングが終って全員で門を潜る。
毎日の恒例、集団下校とも言える寄り道をして解散。
一人、また一人と分かれ道で手を振り別れ、田島の軽快で豪快なバイバイに終止笑顔が飛び交う。最後の阿部に手を振れば、最後に残るのは田島と三橋の二人だけ。

やっと、だ。

そのまま三橋の家に雪崩れ込んで部屋に鍵をかけた。
落ち着く間もなく三橋に抱きつく。後ろから覆い被さって、首筋にキスをして。

「んッ……待って」

三橋はモジモジと身を捩るが、俺は止めずに体重をかける。
膝を軽く突いてやれば四つん這いに崩れ落ちて、綺麗に収められていたシャツを肩甲骨辺りまで捲り上げた。

「……ッ、」

汗の滲む背にキスを落とし、横腹に噛み付く。歯型が付かない微妙な力。幾度も体を重ねて最近やっと覚えた力加減だ。
痛みに息を呑む三橋を他所に、次はベルトに手を掛ける。カチャカチャと器用に外し、ホックにファスナー、最後に下着を脱がせ下半身を露にさせた。

「ふあッ、ん…ぁ」

指二本を揃え三橋の口内を抉じ開ける。
中指と人差し指で舌を抓めばタクタクと涎が溢れ俺の掌に伝う。
その間にも反対の手は薄桃に色付く突起を弄ぶ。緩急激しく弄れば無意識に揺れる腰。
涎で濡れた指を引き抜き、バックの体制そのままに閉じた下孔を抉じ開けた。

「く、ああッ……!」

小さな悲鳴。
痛いって逃げる腰。だから逃げない様に蜜を溢す陰茎を摩ってやった。
クチクチと卑猥な音に更なる興奮を覚え、自分の雄も限界だと布を押し上げる。

程よく解れた下孔から指を引き抜き、少々焦り気味に自分の陰茎を剥き出す。腰に引っかかるだけになったパンツに巻き付くベルトがカチャリと音をたてた。

「力抜いて……」
「い、はぁっ、」

返事の様な拒否のような曖昧な声にも関わらず、田島は盛る雄を無理矢理に突き刺してゆく。

「ッ―――!」

直ぐに奥までは到達できない。
力を入れないでと言っても痛みには勝てないらしく、荒い呼吸に止まらない下孔の痙攣。
落ち着くまで待てなくて、半分も入ってないのに腰を動かし始めた。

「ひ、あッ……んぅッ」
「キツ……」

そんな事を繰り返していれば、自然と奥へと誘われて。

「あっ…ああッ……気持ちいい」
「俺も…すげーいい」

肌がぶつかる音。荒い息。互いの名を呼ぶ声。
然程長い時間ではない行為に没頭するには十分な効果音。

「い、くッ……ああッ!」

三橋の途切れ途切れの声。限界を知らせると同時に白濁を床に散りばめた。

「くッ…」

激しい下孔の痙攣に誘われ、田島も中へと欲を叩き付ける。
繋がったまま、荒い息の二人は呼吸が落ち着くまで体制を崩さず熱を分け合い、呼吸も整えばズルリと陰茎を空気に晒した。










「………今日、も 嫌な事あった、の?」

衣服を着込みベットに座り寄り添う二人。
田島は足をプラプラさせ下を向いたまま口を開かない。

昼間には想像できない姿。
これが、本当の田島なのだ。





「羨ましい……?」
「な、に?」
「三橋は、俺が羨ましい?」

下から覗き込むように見てくる田島に、三橋は多少戸惑いを見せる。
でも直ぐにミーティングの時の事を言ってるのだと気付いて、小さく笑った。

「辛いんだ」
「…うん」
「俺、みんなが思うほど明るくないし元気じゃない」
「……うん」
「笑いたくないのに笑わないとダメなんて……苦しいよ」
「……そう、だね」

言い終われば、また口を閉ざす田島に三橋は視線を送るだけ。
それで十分なんだ。三橋は俺が求めるものを知っている。

だから、俺は俺でいられる。

「二人で 居よう?」
「……え?」
「お、俺が 田島君を守る、よ。だから……」
「……うん」
「だから、泣いて 良いよ」
「ッ―――うん」

三橋の肩に額を置いて、田島は声を上げず静かに泣いた。
三橋は小刻みに揺れる頭を両腕で覆い抱き締めて、小さな声で大丈夫を繰り返した。





誰も本当の俺を知らなかった時、

誰も本当の君を知らなかった時、


いつか出会う貴方を想い、一人泣いていた。





今は二人、孤独に怯える二人だから支え合って助け合って。
素に戻れる瞬間があるから明日も笑える。





きっと、明後日も。

END

笑ってるから楽しいなんて限らない。
水谷は無意識に爆弾踏む人だと思う。すいません。



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