林檎の様に真っ赤な頬。
汗ばんだ首筋。
荒い息。
お前と初めて出会った、あの試合。
その時の、お前。
だけど違うんだ。
今、俺の前にいる『お前』は。
誰も知りえぬ優越感
「あっ、はぁっ……っ」
深い深い吐息に混ざる、甘い声。口元に腕を宛がい眸を閉じる少年の姿。
夕日が差し込む一室に布団も敷かずに重なって、ピチャリピチャリと水音が定期的にリズムを取っていた。
「廉…腕を退けて」
「ふぁっ…やっ…だぁ」
「声が聞こえない。除けろ」
殆ど命令に近い、その台詞。言われた少年は首を横に振る。
チッ。
僅かに聞こえた舌を打つ音。
「言う事を聞かない廉は嫌いだな」
「は、ぅ……やだぁっ…」
「我侭」
上に被さる男は、嫌々と首を振る少年の頬に手を添えて。声を出さないようにと口に当てる腕を退し、顔を埋めた。
チロリ出した舌を起用に潜らせて、頬から唇、最後は口内へと挿入した。
「ふっ、んんッ……」
準備なんてしてなかったから。
少年の声は唸りに変わって、苦しそうに表情を強張らせる。
「隙あり」
バンッ。
床に勢い良く落とされた細腕。上から押さえつけられ、微動だに出来ない。
「やっ、だ……慎吾さん…痛 い 」
「痛くしてんだから当然だな」
逆光のせいで表情が判らない。ただ、聞こえる声には少しばかりの怒りが見て取れた。
ゴクリ生唾を呑む音が室内に響く。
微妙な沈黙が、ジワリと恐怖を掻き立てた。
床に押し当てられている三橋の姿と、それを上から覗き見る、島崎の姿。
二人がこの様な関係になったのはごく最近の事。付き合うとかそんな事関係なく、体を交えたのだ。
事情の最中も好きだ愛してるだの戯言は無く、ただ欲を吐き出すだけの為に事に励んでいる感じだった。
三橋もそれに異論は無いらしく、求められれば素直に体を許した。
島崎も男相手に、なんて関係無い様子で三橋を抱いてきた。
女々しくても一応男の三橋にとって、全てが初めての経験。今回も、慣れない性行為に眉を潜めていた。
「廉、舌出して」
「え…?」
「べろ。ほら、出して」
言われるがまま、恐る恐ると舌を出して。すると、島崎も同じ様に舌を出す。
そのまま舌だけを重ねて、島崎は時折吸い上げ、絡め取り、甘噛みして、また吸ってを繰り返した。
上から下へ、涎が三橋の喉を塞き止めて、ケホリと苦しいと咳をした。
「暖かいな」
「ゲホッ……な、に ?」
「廉の舌、俺のよか暖かい」
「そ そう、なの?」
自分以外の舌の温度なんて当然知らないから。初めて言われたこの言葉を、三橋は興味深げに聞き返した。
「ほ、他に 誰か、と……」
「ん?廉だけだよ」
たどたどしい三橋の言葉を素早く理解して、島崎は飄々と言ってのけた。
それに僅かだが安心の表情を見せる三橋を島崎は満足そうに見下ろしていた。
「ヤキモチ?」
「ちっ、違いま、す」
「へー」
「違い、ます!」
「はいはい」
茶化すようなその台詞に、プックリと頬を膨らまして拗ねてしまった三橋は、完全に横を向き顔を逸らされてしまった。
「……拗ねた顔も可愛い」
耳朶を甘噛み。そのまま筋を伝って喉仏へ。テカテカと涎で光る喉元は、美味しそうに艶めいていた。
「も、駄目。限界」
「ッ?!」
唐突に浮遊感に襲われて、三橋は声も出さずに島崎を探した。
ふと、視界に入る自分と同じ薄茶の髪。
「ッ、あっ…やっ…ヤダッ!!」
大きな声を出して、三橋は顔を蛸の様に真っ赤にして暴れだした。
「動くなって。解してるだけだから」
「やッ…恥ずかし、いッ…」
「なんで。何時も触ってるだろ?」
「だって…そこ、汚 い 」
何時もは指で解す、三橋の秘部。今回はその何時もの手を太ももへ、両足を抱え上げられていた為、浮遊感を感じてしまったのだ。
今三橋の秘部を解しているのは島崎の舌。起用に嘗め回し、蕾を抉じ開けて、元々濡れる事の無いそこは涎のお陰で女性の様に濡れていた。
「ひぁっ…あぁっ、やっぁ…」
ピチャリピチャリと聴覚を刺激する水音。
普段は排泄の時に使用するそこを執拗に嘗め回される異様な感覚に眩暈が襲う。
「やっ、何か変っ…ふぁ…あぁっ」
「何が変なの?言ってみ」
「ヤダッ…止め て 」
持ち上げられた足をどうにかしようと暴れてみるも、しっかりと抱えられた太股は島崎の手内に納まり外れない。それよりも、暴れたせいで先程よりも大きく広げられ、さらに恥かしさを助長させる。
「っあ……ひ、んっ…」
「……丸見え」
「意地、悪 しない、でっ」
徐々に解れていく蕾に満足そうに舌を這わせて、島崎の手は漸く力を緩め、抱えられた足を床につけた。
そのまま少しだけ顔を上げ、パチリ三橋と目が合って、一笑。股関節辺りにキスを落として、横へと顔をずらした。
「はっ…ああぁぁっ…ダメッ」
先程よりも大きな声を出して、三橋は目一杯体を捩じらせて拒む。
スカスカと手が島崎の髪を掠る。届かない片方の手は、宙を揺ら揺ら彷徨っていた。
「三橋のココ、すっげー濡れてる」
「あっ、ぁあっ…ふぅっ…」
「甘い蜜零しちゃって…勿体無いな」
「いや、だ……もっ、い…ぁ…」
脳天に電気が奔る。
眩暈が酷くなって、熱が一点に集中する。
三橋のそこはヒクヒクと痙攣し始めて、咥えていた島崎も気付いたのか今までよりも強く吸い上げた。
「っ、…ああぁぁっ…!!」
呆気無く精を吐き出した三橋。島崎は大袈裟に喉を鳴らし、全てを飲み込んだ。
「穴舐めてる最中から怪しかったけど。こんな早いとは」
島崎曰く、挿入して直ぐにいかれるのは面白くないと言う。三橋の蕾を舐めながら予感はしていたらしい。
だから入れる前に出させて、落ち着いてから事を始める寸法だったのだ。
それが先ほど発した言葉の全てで、話し終えれば満足そうに笑みを見せた。
「スッキリしたトコで、本番始めようか」
「痛い、の…嫌、で す 」
「廉が大人しくしてりゃ、気持ち良くしてやるよ」
島崎は肩で息をする三橋に覆いかぶさり、キスをした。角度を変えながら、深い口付けを交わして、起用にも島崎はその最中にベルトを緩め、盛る雄を宛がっていた。
「力抜いてな…」
「ッッ……ああぁぁっ…!」
悲鳴に近い声が上がる。
幾度となく体を重ねても、慣れない圧迫。
三橋は無意識に逃げ出す腰を両手で固定され、島崎は先端さえも飲み込めない窮屈さに顔が歪む。
「力抜けって…」
「ぅ、あっ…はあっ、はっ…」
ボロボロと溢れる涙。
まだ半分も入ってない。けれど、三橋の顔は汗と涙でぐしょぐしょになっていた。
「ったく、しょうがないな…」
押せど引けども入らない。
こっちだって我慢の限界、早く出したいのだ。
島崎は三橋の脇に手を潜らせ、勢い良く持ち上げた。三橋は、胡坐を掻く島崎を跨ぐ体制となっていた。
「自分で入れろ」
「じ…自分、で ? 」
頷きもなく、視線だけを送られて、ゴクリ生唾を飲む音が空気に消えた。
「こ、怖い よ 」
「なんで?」
「自分で なん、て 初めてだ から」
「じゃ、また一つ廉の始めてが貰えるんだ」
にっこりと微笑んで。
嬉しいな、なんて良いながら、軽めのキス。
「ッ……?!」
まだ心の準備が出来ていないのに、島崎は僅かに力を入れて、三橋の腰を落とさせた。
入り口に触れる先端。
じらす様に触れて離して。
興奮からか、息が荒くなる。
痛いけど、その後のキモチイイは知ってる。頭とは反対に、体の疼きが止まらなくなってきた。
「――く、ぅ……」
下口に意識を集中させて、三橋は自ら腰を落とし、島崎の雄を咥え込んだ。
「は、はっ……あぁっ……」
「キツ…」
まだ抜けきらない力はあるけど、三橋は何とか島崎の背にしがみ付き中へと導く。
ぐちゅ、と粘着質な音。それは三橋のそこから垂れた蜜が鳴らしていた。
「ふぁっ…は、入っ たぁ……!」
蜜のお陰で半分以降はすんなりと咥え込み、今となっては完全に一つとなった二人の体。
やっとスタートに立った性行為に、島崎は小さく息を吐いた。
「ふっ、くっ……あぁっ」
グチュグチュと水の音。スプリングの音がしないのは、ここがフローリングの上だから。
二人の荒い息はリズム的に、重なる影は夕日に長く伸びていた。
「廉…気持ちいいか?」
「あっ…ぅ……気持ち いい」
自ら動く三橋は、天を仰ぎ声を漏らす。男とは思えないほど細い喉が誘う様に視界に入った。
単純に美味しそうだと思ってペロリ、喉仏を一舐め。ひゃあっ!と、喘ぎとは思えない声が聞こえた。
「興奮すんな…その声」
「ぅう…意地悪」
「廉は全身が性感帯だな」
「ち、違ッ…」
「……調べてみるか?」
「やっだぁ…」
三橋の反対なんて耳に入っていないのか、島崎は喉を始め耳の裏や鎖骨、二の腕や手の甲と、くまなく嘗め回った。
そのつど聞こえる甘い声。敏感に肩を揺すられては面白くて止めるに止めれない。
「廉は気にせず動いてよ」
「やッ…無理、です」
「なんで?感じないんだろ?なら動いて気持ちよくならないと」
意地悪く、その後も執拗に三橋を弄る。三橋は動く事を止めて島崎にしがみ付いて、動けって言っても駄々を捏ねる子供の様に首を横に振った。
「しっ、慎吾さん、が 動い て 」
「俺は忙しいの。自分で動いてスッキリしな」
冗談。
早くスッキリしたいのは自分の方。でも、三橋を苛めるのは止められない。
グシグシと泣く顔は、同じ男同士でもかなりそそられる。
「や、だぁ…慎吾さん と 一緒が、いい」
グイグイと力が篭る、三橋の腕。時折締まる蕾が自身の限界を知らせてきて、ああ、もう少し辛抱強くなりたいなぁ…と嘲笑。
「なら、ベットに行こうか」
「連れてって……下さい」
顔を真っ赤にして、上目遣いで俺を見る。
なんて可愛い生き物なんだ。
「はいはい、お姫様。ベットにお連れしますよ」
本当に、コイツだけは誰にもやりたくないな…なんて。
言葉に出せるほど、綺麗な関係じゃないから。まぁ、言うつもりなんて毛頭無いんだけど。
「明るくなるまで寝かせないから…覚悟しろよ」
ベットに体を委ねて直ぐ、島崎は獣の様に唇を貪った。舌を入れては抜き、歯列をなぞっては吸い付いて。三橋も負けじと、島崎にしがみ付き口付けを交わした。
「――!!んんッ」
一瞬、大きく開かれた三橋の眸。ジタバタと腕を動かすが、島崎はキスを止めようとはしない。
ギシギシと鳴り出すスプリング。荒い吐息は重ねた唇から漏れるもの。
「ふッ…ぅんッ…あ、う…」
喘ぎには程遠い唸り声。唇を重ねたままの状態で、島崎のソレは三橋の中を掻き回していた。
深く突き刺されて、揺さ振られる度に零れる涙。永い口付けで、溢れた涎はタクタクと三橋の頬に線を描いていた。
程無くして、漸く唇を離した島崎。三橋は慌てて空気を肺に送り込んだ。
苦しさで咽る事、数回。次には喘ぎに変わる、忙しい子。
「プッ…可愛いな」
「あっ、はっぅ……やっ、あぁっ」
思わず笑ってしまった。
けど、今自分の下で善がる顔は普段は見せない妖艶さがあって、そのギャップがまたたまらないな、と島崎は思う。
「もっと声聞かせて…」
三橋の弱い箇所を重点的に浅く深くを繰り返して、桃色の突起を甘噛みすれば、思い通りの良い声が耳に届く。
「やッ、慎吾、さんっ……!」
「ほら、もっと啼けって」
「ッあ…ひぅッ…」
激しくなる音と共に、島崎は三橋の腰を持ち上げ、中へ強く打ち付けた。
「スゲ…キモチイイ」
「あっう…やっ、あぁっ…」
ギシギシギシ、室内に響く音の間隔が狭まる。
三橋の顔は既に真っ赤に染まっていて、ヒクヒクと島崎を咥える口が痙攣し始めた。
「し、慎吾さッ…も、でちゃ…ぅッ」
「いいよ。一緒に、な」
コクコクと何度も頷いて。
島崎は一旦自身をギリギリまで引き抜き、直ぐに最奥まで打ち付けて小刻みにスピードを上げた。
「ひッ…ああぁぁッ…!!」
三橋の雄から勢い良く吐き出された白濁。腹の上に広がった白を見て綺麗だと思った。
「ッ…出すぞ」
直後に島崎も三橋の中へ欲を吐き捨て、二人分の荒い息が最後まで部屋に響き渡った。
事情も終われば、ぐったりとベットに沈む二つの体。島崎の腕枕で気持ちよさそうに三橋は眠っていた。
「やって直ぐに寝るなんて…ムードねーな」
口角を吊り上げて、島崎はふわりと笑う。
爆睡してるその顔を見てやろうと、腕はそのままに上半身を横に向けて、静かな寝息は耳を澄まさないと聞こえない。
綺麗に並ぶ、長い睫。本当に男なのかと疑いたくなるほど。
「男なんだけど、な」
汗ばんだ三橋の髪をかき上げながら、
「愛してる…」
島崎はポツリ、独り言。
決して三橋には聞こえない様に。
寝てる間に、内に秘めた想いを吐き出す。
「……言えねーよな」
言ったらお前を放したくなくなる。
学校が違うから会えない事が多くて、まだ一年のお前にはやりたい事も、遊びたい事もたくさんあるだろうから。
俺の独占欲で自由を奪いたくない。
「言わないけど……お前は俺のモノ」
愛しいこの子を困らせない様に、眠る少年へ誓いのキス。
「こんな顔、他の奴に見せてたまるか」
野球がやりたきゃ、やればいい。
アイツらと遊びに行きたきゃ行けばいい。
でも、これだけは…、
誰も知らない、俺だけのお前。
「我慢…も、悪くない」
どんなに自由にしても帰ってくる。
求めれば素直に受け入れてくれる。
優越感。
今はそれだけでいい。
これ以上は求めない。
このままの関係が続いたら言おうか、卒業して一人前になったら迎えに行こうか。
まだまだ先は長い。
無理をしない程度に、ゆっくり気持ちを伝えていこう。
END
島崎は裏が似合うと思う。
阿部君や田島様とはまた違う、大人な抱き方が出来ると思います。
Back